モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「!」

「…一度読んだ本の
文章はだいたい正確に
記憶してるんだよ。
それより…キミ、
さっき僕に…。」

椅子に座りながら、
姫乃を抱えるような
状態のまま耳元で
囁くと、その問いかけの
先に感づいたのか、
姫乃は無理やり話題を
変えた。

「寝るのに!ロッキング
チェア使えばいいじゃない!
どうしていつも使わないの!?」

すでに何度目かになる
どうでもいい内容で
話をそらされたのが
気にくわなくて、
どうにか凍夜から
逃れようともがく
姫乃をさらに強く
抱きしめる。

「僕は使わないよ。」

「だったら…。」

「でも、あれに座って
くつろいでるキミは
無防備で可愛いからね。
あの椅子はこの部屋に
ずっと置いておく。」

「…っ。」
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