モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

兄弟―ノークス

一人取り残されたノークスは、
お茶を一口すすり、ため息をついた。
正直にいって、複雑な心境だった。

餌として連れてきたあの少女。

この城の近隣の村のはずれに住んでいることと、
数日のうちに村の地主の愛人として
輿入れすること以外は何一つ知らない。

ただ、数週間前、一目見たときに
彼女でなければ、と思った。

あの女と容姿がよく似ていたから。

だから、地主の手がつき処女でなくなる前にと、
下調べもろくに済ませず連れてきた。

その結果が、これだ。

凍夜は彼女を「おもしろい」といった。

それはつまり、彼好みのクセの強い女なのだろう。

…あの女と、同じ容姿なのに中身は
相当違うのかもしれない。

そう思うと、ノークスの頭をよぎったのは、
彼女に極力関わらない方がいいという選択肢だった。

ノークスにとって彼女の価値は、
食料としての甘美な血とあの女に似た容姿だ。

あの女への復讐心を満たす為なら、
当面は食事の時の前戯での凌辱だけで十分なはず。

下手に関わって復讐心が萎えるのは困る。
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