モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
姫乃はこのドレスを
喜ばないだろう。

そうとわかっているのに
用意しているのだから、
実に滑稽な話だ。

彼女は、自分が飾り
たてられる価値のある
女ではないと本気で
思っている。

自分の容貌に、あまり
自信がないのだ。

彼女が酒に酔って
うっかり漏らした話を
思い出す。

小さい頃、大人たちは
姫乃のことをこぞって
天使のようだとほめて
くれたのに、同世代の
男子たちには散々性格や
容姿を気味が悪いと
けなされたらしい。

そんなに気持ち悪いなら
関わらなければいいのに、
彼らは姫乃にわざわざ
意地悪をしにくるから、
彼女は同年代の異性には
近づかなくなったのだという。

その話は、凍夜に複雑な
思いを抱かせた。
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