モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
着るものがなければ、
文句をいいながらも
彼女は黙って着る
しかない。

基本、現実的な
性格だから、必ず着る。

そう目論んで、浴室に
押し込んでからずいぶんと
時間が経つのに、姫乃は
いっこうに姿をみせる
気配がなかった。

まさか、のぼせて
いるのだろうか、と
いう普通の心配と、
また、何か独特の思考で
おもしろいことを
やらかしているのでは
ないか、という妙な
期待をそれぞれ
抱えたまま、凍夜は
浴室のドアを少しだけ
あける。


あけたドアのその先で、
やはり彼女は後者の
期待を裏切らなかった。

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