モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
先ほど、窓から落ちた
衝撃で目に溢れていた
涙が、こぼれた。

嗚咽をこぼしは
しなかったが、
これからどうなるのか
怖くてたまらない
姫乃の目はどうしても
うるんでしまう。

「…本当に嫌なら、
もう触らない。」

姫乃の恐怖を察して
くれたのだろうか。

姫乃が泣いていることに
気付いた凍夜は、
頬をこぼれる涙を
指先でぬぐいながら
耳もとで囁いた。

「…。」

嫌なわけでは、ない。

凍夜に触れられるのは、
嬉しい。
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