モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
東雲は、目の前に姿見を
置き、その辺りに
落ちているタオルや
コルセットを抱えて
部屋の外に姿を消した。

残された凍夜は、
鏡の中の姫乃と腕の
中の姫乃を眺める。

元気に動き回る姫乃は
もちろん凍夜を
飽きさせないが、
こうして静かに凍夜に
抱かれる彼女を
見ているだけでも
凍夜は全く飽きる
ことを知らない。


もし、このまま姫乃が
起きることなく歳を
重ねて逝ったとしたら。

この腕に彼女がいる限り、
自分も飢えすら感じる
ことなく穏やかに息を
引き取ることが
できるのでは
ないだろうか。


いいや。


もしも、彼女が自分の
花嫁になってくれたのなら、
例え死ぬことはできなくとも、
これまでで一番穏やかな
未来を生きることが
できるのかもしれない。

そんな、いくつもの
幸せな妄想に思考を
ゆだねながら、凍夜は
緩やかに眠りに引き
込まれた。
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