モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

ドレス―姫乃

凍夜の部屋に残された姫乃は、
はじめのうちは落ち着かない様子で
部屋の中をうろうろしていた。

しかし、数時間がたっても、
どちらの吸血鬼も部屋に入ってくる様子がない。

どうしようか、と悩んでいると、
ドレッシングルームの掃除をしていたらしい
先ほどの少年に凍夜はしばらく戻らないから、と
無理やり浴室に放り込まれた。

仕方がないので、手早く身体を洗って上がると、
姫乃の寝ていた部屋にあったらしい
ドレスが用意されている。

姫乃の好みではない、淡い色に繊細な
フリルと造花をあしらった華やかなドレス。

こんな可愛らしいものが似合うわけないと
思いつつも、先ほどまでくるまっていた
シーツは片づけられてしまったし、
他に着るものもないので仕方なく袖を通す。

着替え終わって戻ると、部屋の掃除を
終えたらしい少年と目があった。

姫乃を見た少年は、しかし、終始無言のまま
姫乃を椅子に座らせると簡単に髪を整え、
薄く化粧まで施して、さっさと部屋を出て行ってしまった。
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