モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
五章
煩い―ノークス
「朔夜様…具合、
悪いの?」
昼食を終え、沙羅の
淹れたお茶を飲みながら
いつのまにか思案に
ふけっていたノークスは、
沙羅の声で我に返った。
気づかうように見つめる
瞳をノークスは見つめ返す。
「いいえ。体調は
万全ですよ。」
特に不調なわけでは
ないので、安心させようと
そういって返す。
「じゃあ、気持ちが
悪いの?」
「…。」
微妙なニュアンスの
言葉に、ノークスは
少しばかり返答に
詰まった。
気分が悪いのか、と
聞かれたら、違う、と
答えたのだが。
「…もやもやしてるの?」
返答を返しあぐねていると、
さらに的確に心中を
捉えられ、ノークスは
少したじろいだ。