モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

初恋―凍夜

食事を終え、意識を
保てないほどぐったりした
姫乃を運び、着替えさせて
寝かしつける。

姫乃の部屋から自室に
戻る途中で、案の定、
凍夜はノークスに
からまれた。

薄暗い回廊でも、
その顔がいやに
にやけているのが
わかる。

「何。」

「おやおや。
からかいに来た
だけですよ。」

「…。」

無言で凍夜は殺気立つ。

「どんな気分です?
姫乃の想い人が
漆黒の覇王と聞いて。」

「…黙って消えて。」

「冗談でしょう。
これほどキミを
からかえるネタは
生まれて初めてです。」

本気で痛い目を
みなければ目の前から
消えそうにない。

そう判断した凍夜の
手には、闇にまぎれて
漆黒の剣が握られていた。
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