モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…そうだね。」

視線を少女から外さぬまま、
珍しく素直に凍夜がうなずく。

「あの、今にも卒倒しそうなほど
固まった顔じゃなければね。」

心底解せない、という顔で凍夜が言う。

「…緊張しているのでは?キミがほめてあげれば
幾分かは気がほぐれるかもしれませんよ。」

凍夜の視線が数秒、ノークスをを捕えたが
すぐに少女へ戻った。

「座らないの?」

早くも、解せない少女の態度を気にすることを
やめたらしい凍夜が、何事もなかったかのように
彼女に席を勧める。

少女の固まった顔が、困った顔になったが、
少しの間目を閉じると、腹をくくったような
毅然とした顔に変わった。

勧められた席に着き、品よく背筋を伸ばす。

その姿が、過去の女の姿と重なって、
ノークスの全身が粟立った。
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