モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「僕も今朝まで
会ってませんよ。
今朝天明が、姫乃が
朝食をとりたくないと
言っていると報告にきて、
すぐに体調を見に行ったら、
あの顔でした。」

疑われることは
推測していたのだろう
ノークスは、特に気分を
害した様子もなく答えた。

「一応、どうしたのか
尋ねましたが、怖い夢を
見ただけだと。
…あの娘が、悪夢を
見ただけで一晩
泣きはらすような、
そんな細い神経を
しているとは
信じられませんがね。」

それは、凍夜もそう思う。

視界の先で、姫乃の
赤く腫れあがった目から、
ひとすじ、雫がこぼれた。

姫乃は、俯き、顔を覆って、
嗚咽をかみ殺して震える。
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