モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
体調や機嫌を気にしていた
凍夜は、頻繁に姫乃の
顔を見ていた。

いつもよりずっと多く
姫乃を見ているのに。

いつもなら、目があった
彼女がふわりと花が
咲いたような笑顔を
見せるのに。


今日は、それがない。


それに気付いた凍夜は、
思わず立ち上がった。

椅子が倒れるのも
気にせず、姫乃に
歩み寄る。

椅子の音に驚いた姫乃が、
音のした方に視線を移し、
そのままその視線を
凍夜に向けようとして、
不自然にそらした。

「!」

自分の気づいたことが
気のせいではないと
確信して、凍夜は
姫乃の腕をつかむ。
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