モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
一瞬、その身を強張らせた
姫乃は、すぐに凍夜を
押し戻して言った。

「触らないで…。」

凍夜の行動を否定する
姫乃の言動は、凍夜の
中に強い憤りを孕ませた。

凍夜から逃れようとする
姫乃を無理やり抱き寄せ、
強引に彼女の唇を奪う。

「…!」

姫乃は、驚いて抵抗を忘れ、
数秒だけ、凍夜の口づけを
受け止めた。

慣れたその様子に、
安堵したのもつかの間で。

「やめて!」

渾身の力で突き飛ばされ、
しかし、びくともしない
凍夜の代わりに彼女の方が
反動で体勢を崩した。

尻もちをつくかと思ったが、
凍夜に掴まれた腕が
支えになって、どうにか
その場に留まる。

姫乃は、数秒俯いて、
顔をあげた。
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