モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
姫乃の視線が、
凍夜の視線を捕える。

「…わたし、もう…
二度とあなたに
触れてほしくない…。」

やっと目を合わせた姫乃は、
怯えた目に涙を浮かべ、
拒絶の言葉をこぼした。

「…。」

彼女の腕をつかむ
手の力が、急速に
抜けていく。

「…ごめんなさい。
…夜の…食事は、
ちゃんと…。」

そうつぶやいて姫乃は
逃げるように去って行った。

彼女の去った食堂で
立ち尽くしていた凍夜は、
苛立ちまぎれにテーブルを
殴りつけた。

手加減の一切ないその拳が、
強固な木製のテーブルを
たやすく二つに分かつ。
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