モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

拒絶―姫乃

逃げるように駆けこんだ
自分の部屋で、姫乃は
眼にとどめていた涙を
こぼした。

絶対に、泣くまいと…
余計なことを考えまいと
心を決めて部屋を出たのに。

凍夜に触れられて
感情が高ぶって
しまったのが、
まずかった。

抱きしめられ、
口付けられれば、
昨日まで彼に
許していた心が
応じてしまう。

律していたはずの
心はたやすくほどけて、
触れられた悦びと、
そして、押さえつけている
醜い感情の渦が頭をもたげた。

それを凍夜に知られたく
なくて、結果、姫乃は
凍夜を拒絶してしまった。
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