モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「?」

静かなはずの廊下で、
声が聞こえる。

内容までは聞こえないが、
間違いなく男の話し声だ。

「…―なら、好きに
すればいい。」

ふらふらとおぼつかない
足取りで、自分の
部屋から出てきた姫乃は、
だんだん近くなる声に
耳をすませた。

回廊の角につかまって、
顔だけそっとのぞかせれば、
その先に、苛立たしげな
ノークスの横顔と
難しい顔をした凍夜が
見える。

…兄弟ゲンカかしら?

様子を見守るべきか、
仲裁に入るべきか。

回らない頭でそんなことを
考えていると、ノークスが
声を荒げた。
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