モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
凍夜に話しかけようと
部屋を出てきたのに、
話しかける気はすっかり
失せていて、姫乃は
追いかけることが
できなかった。

冷たく、嫌なモノが
姫乃の心臓を撫でる。



…勘違いを、していた。



声を聞けば、
その姿を探してしまうし、
目が合えば思わず
微笑んでしまうひと。

触れられるのはうれしいし、
話をすれば楽しくて
たまらない、そんなひと。




好きだと、思ったひと。




漆黒の覇王の話をしながら、
姫乃は凍夜を想っていた。

漆黒の覇王への憧れを
口にしながら、憧れとは
違う想いを凍夜に
抱いていることに、気付いた。




…自分は、彼にとってただの
餌にすぎないのに。

< 348 / 726 >

この作品をシェア

pagetop