モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
姫乃が、餌だから機嫌を
取るために優しくして
くれていたはずだったのに。

なのに、餌である
姫乃の血を、凍夜は拒む。

他に、新しい餌を
見つけたわけでもない。


あの日。


凍夜に贈られた
ドレスを纏った
姫乃を抱きしめながら、
死にたくないと、
彼は言った。

なのに、なぜ、
自ら危険を冒すのか。



「…?」



短毛の白猫姿の
天明と共に、村を
大きく迂回した林を
抜ける。

モントリヒト城に
続く隠し通路の
近くまで来たところで、
姫乃は思わず
顔をしかめた。
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