モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
…何か…何だろう。
よくわからないが、
嫌なものが、近くにいる。
立ち止まり、周囲を
うかがうが、視界に
映るのは見慣れた
村の外れの風景と、
陰り始めた空ぐらいだ。
なのに。
とても、嫌な感じが、する。
ここから先に進めば、
それがもっと強くなる。
止まっていた足が、
意図せず後ろに下がった。
一歩、また一歩と、
姫乃は今歩いてきた
道を後ずさる。
この、嫌な、感じ。
そう、においだ。
覚えが、ある。