モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
たしか、幼い頃、よく通った
村で、死人が出たときが、
最初だった。

姫乃がそのにおいのことを
父に言ったとき、父は
それは死の香りなのだと
言っていた。

稀に、その香りに敏感な
人間がいるのだと、
父も同じなのだと、
教えてくれた。


そして、父が死んだときも。


母が死んだときも。


このにおいは、蔓延していた。



…おかしい。


この小さな村で、死人が
出たなら、仮に一人身の
者であっても、すぐに
誰か気付いて葬儀が
行われるはずだ。

なのに、村のどこを見ても、
全くそんな様子はない。

沙羅も、そんなことは
言っていなかった。

それに、葬儀の時に
鳴らされる鐘は、
モントリヒト城にも
聞こえるのだから、
姫乃が気付かない
はずがない。
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