モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
抱えられていた沙羅は、
地面しか見えない視界に
素早く動く白い影を
見つけた。

「ぎゃあっ!!」

「な、なに…猫!?」

沙羅を抱える使用人の
足に、白い毛長猫が
噛みついた。

使用人が、痛みと驚きで
バランスを崩し、沙羅は
地面に放り出される。

「んーんー!」

黎明、と叫んだが、
ふさがれた口からは
きちんと言葉が出ない。

黎明は全身の毛を逆立て、
沙羅を守ろうと
使用人たちを威嚇する。

先ほど、突然威嚇を始め、
森へ飛び出したのは
彼らから沙羅を逃がすため
だったのかもしれない。

早く逃げなければと
立ちあがり、駆け出して
数歩で髪の毛を
引っ張られた。
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