モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
彼らがなぜ、気付かないのか
不思議でならないが、
それどころではない。

黎明がどのように
感じているかはわからない。

ただ、沙羅は突き刺さる
ような空気に、身動きを
とることすら忘れて
しまった。

ぴりぴりと肌を刺激し、
少しでも動けばたちまち
切り裂かれて
しまいそうな空気。

「おい、何でもいい、
さっさと連れていくぞ。」

使用人の一人が無抵抗の
沙羅を抱えた瞬間。

「…僕は機嫌が悪いんだ。
さっさと、それを置いて
消えてくれる。」

とても冷やかで、
鋭い怒気を孕んだ声が、
響いた。
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