モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「俺があの計画の助言者の
一人だったからだ。
もちろん、計画に
お前が使われるなどとは
夢にも思わなかったが…。」

「な…。」

「オラティオは、
自分の持つ天使の祝福の
力がお前にどれほどの
強制力を持つか
知らなかった。
母と慕うシスターが、
巧妙に隠してきたからな。」

「…嘘だ。」

「嘘じゃない。
オラティオはお前が
捕えられ、非道な実験の
被検体にされている
ことを知り、天使の祝福を
使ってお前の兄を手引きした。」

「…。」

「あの、厳重な教会に、
誰にも見つからず凍夜が侵入し、
たやすくお前の下にたどり
着いたのは、オラティオが
天使の祝福で凍夜を導び…。」

「黙れ…!」

「…。」

雨音が、うるさいくらいに
音を立てているのに、
シャディンの話は驚くほど
よく耳に響いた。

ひと間を置いて、
シャディンは続ける。
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