モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「お姉さま、今すごく
落ち込んでるの。」

唐突に、沙羅が
話題を変えた。

その原因が凍夜との
いざこざであることを、
彼女はたぶん知らない。

言う必要も感じないので、
沙羅が言うままにさせておく。

「あんなに落ち込んだ
お姉さまを見たの、
お母様が死んだとき
だけなの。」

…凍夜とのことは、
姫乃にとって母を
失ったことと同じ
くらいショック
なのだろうか。

ならば、凍夜は
別に姫乃に嫌われて
いないことになる。

しかし、そうなると、
彼女が自分を拒む
理由がますます
わからない。

「ずっとずっと、
お母様が生きていた
ときから、わたしの
こと、大事に
してくれたの。
とっても、
優しい人なの。
ずっと、ひとりで…
強くて、でも、
すごく…。」

興奮気味にまくし
たてた沙羅は、
そこで言葉を濁した。
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