モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
沙羅を抱えたまま、
足音を殺して
村の民家の影を歩く。

この民家の向こうへ
続く細い道の先に、
姫乃がいつも使う
モントリヒト城への
抜け道がある。

静かに、歩みを
進めれば、喰血鬼が
血肉を貪ったにおいが
強くなった。

雨で隠せないほどの
においに、凍夜は
顔をしかめる。

このあたり一帯の
民家の中には、
人間だったものの
残りしかないのだろうと、
そのにおいが推察させた。

さらに歩みを進めると、
凍夜の耳に、男たちの
話し声が届く。

片方が、ノークスの
ものだというのは
すぐに分かった。

そして、もう片方にも、
聞き覚えがある。

どうにか記憶を
手繰りよせ、思い出す。
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