モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
恨みは、ない。

片割れを失った
ノークスが
衰弱死するのは
可哀そうだが、
仕方のないことだと
折り合いをつけた。


姫乃を、手に入れる。


それさえ果たせるなら、
どんな労力も犠牲も
厭う気はない。

かつての同胞の
朽ちていく様を
見る気もなく、
シャディンは姫乃を
抱き上げようと
かがみ込んだ。

「…その薄汚い手で、
姫乃に触るな。」

「!?」

すでに事切れているはずの
凍夜の声に、シャディンは
驚いて群がる喰血鬼たちを見た。

喰血鬼の山の下には、
夥しい量の血が、
しみだしている。

あり得ない。

あの状態で、
血肉を貪られ、
生きているわけがない。

いや、生きていたとしても、
致命傷をさけられる
はずがない、と、
シャディンは思い直す。
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