モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
何かがひび割れる音が響いて、
姫乃は凍夜の傍らの
剣に視線を向けた。

「…東雲?」

姫乃に名を呼ばれたのに
応えるように、
その漆黒の刀身が
一瞬だけ血の色に変わる。


その、直後。


「東雲!!」

ひび割れる音が続き、
東雲は砕けた。

砕けた破片が、
とろりと溶け、
赤い水たまりを作る。

しばらく、呆然と
それを見ていた
姫乃は、唐突に、
状況を理解した。

「血…。凍夜…血…。」

うわごとのように
繰り返し呟きながら、
部屋の棚の引き出しを
ひっくり返して、
探し始める。
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