モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
生臭く酸味を帯びた、
鉄のような味が
口の中に広がる。

気持ちが悪くなるような
味に嫌悪しつつも、
姫乃はたっぷりと
自分の血を口に含んだ。

そうして、凍夜の頬に
手を添えて、口付ける。

以前は姫乃の唇を
貪ったその口が、
今は何の反応も示さない。

こぼさないように、
慎重に、血を口内に移し、
こぼれないように
そのまま姫乃の
口で蓋をする。




…飲んで…。




お願いだから、飲んで。




祈るように、目を閉じる。

深く深く、口づける姫乃の、
閉じた目から涙がこぼれた。
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