モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

衰弱―凍夜

酷く甘美なその味に、
深く墜ちていた
凍夜の意識は
たやすくすくい
あげられた。

様々な感情の渦と、
それをすべて
覆い隠してしまうほどの
必死さで満ちた味が、
今まで味わったどんな
血より凍夜の飢えを
満たす。



…もっと。



そう求めてすぐ、
自身の唇にとても
柔らかく温かいものが
押しつけられている
感触に気付いた。

両の頬には、
ぽとぽとと暖かいモノが
触れて、筋を
残しながら顎へと
伝いこぼれていく。


そっと、目を開けた。


よく見知った少女の、
まぶたで覆われた
瞳がすぐ目の前に見える。
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