モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「何、勝手なことをしてるの?
僕は血を飲みたいなんて
ひとことだって言ってないよ。」

苛立ち紛れに、悪態を
つけば、姫乃の目は
驚いて見開かれた。

そのまま、勢いよく
姫乃の片手が振り上がる。

振り上げた手の行き先が
自分だと理解して
体に力を入れるが、
姫乃の手は、その位置から
動かなかった。

不審に思って、姫乃を
見れば、姫乃は口を
ぎゅっと引き結び、
わなわなと身体を
震わせている。

そうして、力なく
振り上げた手をおろし、
そばに落ちていた
何かを握り締めた。

黙り込む姫乃の目から、
透明な雫がこぼれ、
再び頬を濡らす。

まるで、凍夜が
泣かせているようで、
バツが悪い。
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