モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
こんなことなら、
余計なことを
言うのではなかった。

自身の苛立ちを
自制できずに悪態を
ついたことを後悔する。

「…。」

何か言おうにも、
何を言えばいいのか、
見当がつかない。

血のにおいが、
空腹が、頭の回転を
鈍らせる。

かける言葉を
探しあぐねていると、
何故か血のにおいが
濃くなった。

においのもとを
探るように姫乃を
見れば、きつく
握り締めた手が
赤く濡れていた。

先ほど、振り上げた
方の手だ。

「!…なにしてるの。」

慌てて、きつく
握られた手を
開けさせる。

血にまみれた
ペーパーナイフが、
音を立てて床に転がった。
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