モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
何も答えない姫乃の顔を
見れば、硬く引き結んだ
唇にも血がにじんでいた。

そうまでしなければ
自制できないほどの
憤りを、姫乃が
必死にこらえている。

そのことに、凍夜は
気付いた。

…しかし、気付いた
ところで、凍夜がかける
言葉がすんなりと
見つかるわけでもない。

必死に考えながら、
姫乃を見つめる。

なんとはなしに、
唇に視線が留まった。

涙と血で濡れた
唇が酷く艶めかしい。


刺激された本能は、
食欲か、色欲か。

不実な想いを表に
出すまいと、
姫乃から目をそらす。

「…死にたくないって
言ったくせに…。」

「…なに…?」

聞き返せば、姫乃は
こらえきれなくなった
憤りをとうとう
爆発させた。
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