モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…僕は、誰にでも
優しくするわけじゃないよ。」

たっぷり時間をかけて、
姫乃の言い分を
咀嚼してから、
凍夜は呟いた。

「食事を、して。」

「…姫乃。」

「理由を言ったら、
食事をするって言ったわ。」

「話をききなよ。」

「食事をしなきゃ、
絶対にきかない。
食事して。」

「…。わかった。」

抱き寄せようと手を
伸ばしかけてから、
触れられたくないと
言われたことを
思い出し、少し、
躊躇する。

涙でぬれた首筋に、
そっと牙をたてれば、
待ち望んだモノが、
のどを潤す。

今までとは、違う。

一瞬で、飢えが
満たされる感覚を
覚えるのに、
すぐさまもっとと
求めたくなる。

口移しで与えられた
血も、そうだった。
< 436 / 726 >

この作品をシェア

pagetop