モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…お願い…
今すぐ逃げて…。」
…そうだ。
ノークスの身を
案じるものだったと、
今になってようやく
思い出した。
そうだ…。
そして、そのあとすぐ、
高位のシスターが使う、
対吸血鬼用の高等結界に
捕らわれた。
あれは、彼女でなくとも、
用意できるものだ。
いや、シスターとしては
落ちこぼれだと言っていた
彼女には、もしかすると
あんな代物を作ることなど
できなかったのでは
ないだろうか。
とある貴族の血筋に生まれ、
血はつながらないが
優しい養父母に庇護されて
育った彼女。
幼い頃から兄と慕う人と
無理やり引き離された
彼女。
自身に、シスターとしての
才能がないから、
親代わりになった
シスターに疎まれていると
言っていた彼女。
…彼女は、ただ、
さびしかっただけなのだ。