モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
一人で部屋にこもっていれば、
どうしても妹のことばかり
際限なく考えてしまうのが、
姫乃の焦りの一番の理由だった。

早くに両親が死んで、残された
姫乃のたったひとりの家族。

両親の財産が十分に残されていたから、
金銭的な苦労はなかったが、
それでも母親譲りで身体の弱い妹を
育てるのは容易なことではなかった。

そもそも、母親が生きていた頃から、
病弱な母の代わりに妹の世話を
してきたのは姫乃だった。

もはや、姫乃の沙羅に対する愛情は、
姉というより母親に近いのかもしれない。

…もう、限界だ。

際限ない焦燥感に耐えられず、
姫乃はたちあがる。

妹に、会わなければ。

一目会って妹の無事を確認して、
自分の無事を伝える。

たったそれだけでいい。

姫乃は凍夜の部屋のドアに手をかける。
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