モントリヒト城の吸血鬼①～ヴァンパイアの花嫁～

背後で、何かが
吹っ飛ばされ、
派手な音が
室内に響き渡った。

驚いて顔をあげた
ノークスと、つい
今しがたまで必死に
抵抗していた姫乃は、
お互いの存在を忘れて
音のしたドアの
方を見る。

視線を集めた
戸口には、
誰もいない。

少なくとも、
ノークスには、
そう見えた。

気がつくと、
左顔面に何かがあたり、
ノークスの身体が浮いた。

先ほどと同じぐらい
派手な音を立てたのが
自分自身だと
気付いたのは、
視界に姫乃を
抱きかかえる
凍夜を捉えて
からだった。

殴られた頬が、
ずきずきと痛んで
いることに気付く。

声を出そうとすると、
容赦なく殴られた
衝撃で口の中が
切れたのか血が
あふれた。