モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…凍、夜。
待、ちなさい。」

自分の上着で
くるんだ姫乃を
連れ、無言で
立ち去ろうとする
凍夜を呼び止める。

今まで見た中で
最大級の不機嫌を
含んだ顔で凍夜は
こちらを一瞥し、
すぐさま戸口へ
向かって歩き出す。

「なんの、真似です。」

「…。」

背を向けたまま、
凍夜は歩みを止めた。

「キミらしくもない…。
裏切り者を、
見逃す気ですか。」



冗談ではない。



「…殺しなさい。」

楯ついた者には
容赦ない、
最強の吸血鬼。

それが、ノークスの知る、
凍夜・モルゲンロートと
いう吸血鬼だ。
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