モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「今すぐここから
出て行きなさい。」

「ですがマスター、
手当てを…。」

「触るな!!」

凍夜に、姫乃に、
嫌われ、憎まれる
覚悟をしたのに。

したはずだったのに。

「なぜ、こうも
思い通りにならない…!」

天明は、ノークス自身だ。

思い通りにならなかったのは、
ノークス自身の本心だった。




―嫌われたくない―




凍夜に。姫乃に。



その本心が、
天明を動かして
しまった。

ふらりと、ノークスは
立ちあがった。

絶好の機会を
逃してしまったのだから、
次の手を考えなくては
ならない。

凍夜を自分から解放し、
姫乃を確実に凍夜の
花嫁にするための手を。


そして。


ノークス自身が、
罪悪感に満ちた
生から逃れるための、
死という逃げ道へと
進む手を。
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