モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
血を無駄に
させたくなくて、
口を開こうとすると、
急に頭が浮いて、
後頭部に柔らかく
温かいものが敷かれた。

「これで少しは
楽にならないかしら…。」

自分の膝に凍夜の
頭を乗せた姫乃が
そうつぶやいた。

ちゃんと凍夜の
意図を理解できて
いたらしい。

そっと額に添えられた
手のひらが、優しく
凍夜の頭を撫でた。

姫乃の甘酸っぱい
香りが鼻をくすぐる。

そのぬくもりと
香りの心地よさに
目を閉じれば、
次第に吐き気が
緩和されていく。

「…キミは…
大丈夫なの。」

いくぶんか楽になれば、
姫乃を案ずる言葉が
真っ先に口を
衝いて出た。
< 517 / 726 >

この作品をシェア

pagetop