モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
―若と坊っちゃんは
吸血鬼として
覚醒を致しマシタ―

―手遅れデス。
奥様はもうじき
お亡くなりになり、
動く骸となるデショウ―


「もっとも、
その話を盗み
聞きしていたのは
僕だけじゃなかった
けれどね。」


翌日、母を
見舞ったとき、
母は凍夜に言った。


―苦しいのでしょう?
わたくしの血を
飲みほしなさい―


言葉を失った
凍夜に母親は続ける。



―朔夜を、
助けてあげて。
あなたも朔夜も、
大事な息子なの―



―あなたがわたくしの
血を飲み干せば、
あなたの飢えも、
あの子が抱く罪悪感も、
拭ってあげられる―



朔夜の血で死んで
しまう前に、
凍夜が飢えを
満たすために
母を殺してしまえば。







そうして、
その日、凍夜は
自分の母親を
手にかけた。
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