モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…。」

「僕は、飢えを
満たしたいから
あの人の最後の
望みを聞いただけで、
朔をどうにか
したかった
わけじゃない。」

朔、とつい昔の
呼び方になって
しまったことに、
凍夜は気付かないまま、
話を続ける。

「なのに、朔は
僕が朔の為に
母親を殺したと
思い込んでる。
勝手に思い込んで、
勝手に自分を
追い詰めて、
そして僕に
殺されたがってる。」

見つめる姫乃の
目から、静かに
涙がこぼれた。

「…。それは、
同情の涙?」

凍夜から視線を
外さないまま、
姫乃はゆっくりと
首を振り、
わからない、と
呟いた。


それきり、姫乃は
泣き疲れて
眠りにつくまで、
何も言わず
ただただ泣き続けた。
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