モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
部屋からここまで、誰にも
見つからなかったのは運が
良かったにしても、誰一人
見かけないというのは
あり得るのだろうか。

しかし、焦燥のため冷静さを
欠いている姫乃の頭は、
異変を感じているものの
そこまで考えつくことが
できなかった。

ようやく玄関にたどり着き、
そっとドアノブに手をかけた
その時。

「…どこへ行くのです?」

静かで低い、それでいて危険を
孕んだ囁きが姫乃のすぐ背後で
制止をかけた。
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