モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
今、自分の一番の
望みを叶えるためには、
沙羅を利用するしかない。

そうと解っているのに、
ここから沙羅が顔を
のぞかせた瞬間、
自分の決心が
揺らぎそうで…
いや、あの娘を
想い浮かべただけで、
すでに揺らいで
しまっている。

「今しかないのにっ…!」

気の遠くなるような
時間、待ち望んだ
機会を失うわけには
いかない。

ずいぶん長く
葛藤した末に、
ようやく、覚悟を決める。

決めて、ドアに
手を伸ばした瞬間。

「…朔夜様?」
「!?」

家の裏手から、
沙羅がひょっこり
顔を見せた。
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