モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「あの、ごめんなさい。
…驚かせて…。」

よほどすごい顔で
固まってしまったのだろう。

沙羅は申し訳なさそうに
謝った。

「…いえ…。」
「今摘んだばかりの
お茶、飲んで。」

出鼻をくじかれた
ノークスは、
呆然としたまま、
沙羅に促されるままに
家に入る。

まともな精神状態なら、
室内に人の気配がないと
気付いたのに。

自分の迂闊さに、
徐々に腹が立ってくる。

「…。朔夜様…。」

つい、足が止まった
ノークスを振り返った
沙羅が呼んだ。

「なんです。」
「…。ううん
…なんでもない…。」

何か言いたげな
様子だったが、
沙羅は何も言わずに
炭でお湯を沸かす
準備を始める。
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