モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…っ…。」

「…朔夜様…。」

憤るノークスの
手に沙羅の小さな
手が触れた。

その柔らかさと
ぬくもりに、
気が緩みそうになって、
ノークスはあわてて
その手を払う。

「…お前に、感謝される
筋合いなどない…。」

「朔夜様…。」

「僕はお前のような
無垢な人間に、
慕われていい
生き物ではない!
母を死に追いやり、
兄に母殺しの罪を着せ、
何の罪もないオラティオと
姫乃を傷つけた僕が!!」

「さく…。」

「名前を呼ぶな!!」

「!」

怒声に、沙羅は身を
すくませた。

しかし、理不尽な
叱責には何も言わず
ただただ黙って
ノークスを見つめ続ける。
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