モントリヒト城の吸血鬼①～ヴァンパイアの花嫁～

「…っ朔夜様…。」

止まらない涙を
一生懸命手でぬぐう。

後から後から
溢れていく涙は、
拭えば拭うほど
止められなく
なってしまう。

「みゃあ。」

膝にすり寄ってきた
ぬくもりに、
沙羅は視線を向けた。

涙でかすむ視界には
白い塊がぼんやりと
しか映らない。

不意に、そのぬくもりが
離れたかと思うと、
なにか硬いものが
落ちる音が聞こえた。

ガラスの割れる音と、
液体が飛び散る音も、
重なったように思う。

驚いて、必死に
あふれる涙を
ぬぐうと、再び
涙があふれるまでの
一瞬に、黒い
足跡が見えた。

何度も何度も
ぬぐい続けて、
その足跡が
何か文字を
書いていることに
気付く。