モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…ただ、機嫌が
悪いだけ…」

そう、書かれている。

「…必要だから、
黎明はまだ、
ここにいる…」

最後の文字を
読み終えると、
再び膝に
ぬくもりが触れた。

今度は、ちゃんと
その姿が見える。


あれほど止まらなかった
涙が、ぴたりと止まる。


黎明自身がここに
いることが、
朔夜の本当の
意思なのだと
主張するように、
朔夜の分身である
毛長猫は一声鳴いた。

得意げに見える
その様子に、
沙羅は知らず
小さく微笑んだ。
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