モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「言えません。」

「…。…天明?」

「言えません。」

予想通りの二人の回答に、
姫乃は小さく
ため息をついた。

昨晩、凍夜に血を
貰った天明も、
どうやら凍夜の命令を
聞かざるをえないらしい。

「言えませんが、お嬢様。」

そういったのは東雲だ。

「マスターは偏屈です。」

「…。…え…?」

そのことばに、
天明も便乗する。

「そうです。凍夜様は
マスターの兄上だけ
あって、ひねくれ者です。」

「…はい…?」

「しかも、意外と
恥ずかしがり屋です。」

「ちょっと見栄っ張りです。」

「それから…。」

「それに…」

そんな唐突に始まった
愚痴のようなものを
延々聞かされて。
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