モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…姫乃…。」

「大好きなお兄様には
会えなかったのかって
聞いてるのよ、
ノークス。」

「!」

あきらかに嘲りを
含んだ言い方に
苛立ちを覚える。

「…昨日のことは
もう頭に残って
いないようですね。
あの程度でまだ
足りないのなら、
もう一度怖い目に
あわせて
あげましょうか?」

ノークスの脅しに、
しかし姫乃は
小さく鼻で笑った。

「もう一度、ね。
できないことは
言わない方が
いいんじゃない?」

「なに…?」

「お兄様を理由に
しないと肝心なことは
何もできない
甘ったれた坊やに、
本気でわたしを
傷つけれるとは
思えないわね。」

「!!」


…何だ。この女は。


膨れ上がる苛立ちと共に、
そろりと別のモノが
ノークスの心臓を撫でた。
< 564 / 726 >

この作品をシェア

pagetop