モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
まさか。

まさか、百数十年
以上も一人で
抱え込んできたモノを、
あの娘にこうも
あっさり崩されて
しまうとは
思わなかった。

あの娘に許され、
諭され、騒がされ、
気がつけば心中に
巣食っていた暗い
罪悪感が、消えていた。

罪悪感のすべてが
消えたわけではないが、
少なくとも、もう、
死んで終わりに
したいとは
思っていない
自分がいる。

なにより、容姿以外は
絶対に似ていないと
思っていた姫乃に
許されたことで、
オラティオにも
許されたような
気がしたのだ。

彼女が絶対服従で
あるはずの母親代わりの
シスターに逆らってまで
助けてくれた命を、
そして凍夜と母親が
守ってくれた
心をもう二度と、
自分から捨てよう
などとは思いたくない。

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